ヨミタイ

がらくた雑貨店は夢宇宙

著者:長谷川 義太郎

 本との出会い

とある金曜日。私は大学の講義が終わったあと、神保町に向かって歩いていた。毎週のように通っている元鶴屋洋服店という本・雑貨屋さんにいき、お店の人にお願いして恋人のお迎えを待っている間しばらくそこで待たせてもらった。その時少し時間が経ってしまったので買った本がこの本である。しかも著者のサインつき。

私はただ何となく選んで買ったわけではない。著者の長谷川 義太郎は「文化屋雑貨店」のオーナーで、実は幼少期からこのお店は知っていって原宿の裏にお店があったときも原宿にいけば必ず行くくらいに好きだった。2021年の冬にたまたま元鶴屋洋服店で長谷川さん本人に会いお話をしたこともあった。きっとこれもなにかのご縁だと思い、この本を買うことにした。ここからは長谷川さんの魅力を伝える。

 

なぜ欲しいものがないのかな

 第一章のタイトルは「なぜ欲しいものがないのかな」。ちょうど自分のこころにも聞いていた。長谷川さんがサラリーマンをやめ雑貨屋さんを始めたきっかけがこの章に書いてある。そもそもこの本は「就職しないで生きるには」というシリーズの八作目らしい。就活という得体のしれないプレッシャーを抱えている大学三年生の私にとってはとても魅力的に聞こえた。

長谷川さんは医者のお父様がなくなることをきっかけに、彼の雑貨屋を開くレールが敷かれることになる。彼はきっとこだわりが強い人なんだろう、私も共感できるエピソードがあった。長谷川さんは自分の息子が生まれたとき、’’金太郎の腹掛け’’をさせたくなり、東京中を探しまわった。見つけたときの喜びはもうコロンブスのようだったと。私もよく自分の頭の中でこんなデザインの商品があったらなあ想像して、それを見つけるまで諦めずに探したりしている。そして長谷川さんは日本各地にとどまらず中国・香港からも選りすぐりのものを集めて唯一無二の雑貨屋さんを開くことになるのである。売りたいものを売る。その姿勢が生んだ文化屋雑貨店はほかにはないお店となった。

 

探してなけりゃ作ればいい

 

「そもそも物をつくりはじめたのは、捜しても捜しても消えていくものがあるからだ。つまり物は朽ちていくのだ。」この文章を読んでハッとしてしまった。私はよく自分が欲しいものを見つかるまで探したり、ビンテージのものをあさったり、それでもなければ作るなんてことがよくある。私の場合アクセサリーがそうだ。よく考えたら自分が欲しいものなんてほかに欲しい人がいても当たり前なのだから、物が朽ちただけで存在していたことなんてざらにあるだろう。今はより便利で機能性のいいものが重視される時代で、昔のものをあさるなんてと思う人がいるかもしれないが心揺さぶるデザインの物たちを大切にしたい長谷川さんの気持ちがわかる人も必ずいるはずだ。私もその一人だと思っているし、文化屋雑貨店はそんな長谷川さんのような人がいる限り生き続ける。

(京)

 

 

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